WI-IAT2020で学会発表をした話

この記事は TUT Advent Calendar 2020 24日目の記事です。

adventar.org

 

2020年12月14日から17日の間に開催されたWI-IAT2020*1という学会で学会発表を行いました。今年はオーストラリアのメルボルンで開催される予定でしたが、新型コロナウイルスの影響でオンライン開催となりました。私は普段から自宅で研究をしているため、学会にも自宅から参加しました*2メルボルン行きかったなぁ・・・、という気持ちもあるけど、2年前シアトルに行った時は飛行機の移動などが相当しんどかったので、自宅から楽に参加できて良かったか、ぐらいの気持ち。同研究室の後輩もshort paperで採択されたので、一緒に発表しました。メルボルンは珍しく日本よりも東にあるので、時差は日本より2時間早いです。よって、学会の開催時間は現地時間で8:45から17:30ぐらい、日本時間だと6:45から15:30ぐらいとなります。参加者の多い中国では日本よりさらに+1時間早いですね。欧州だと深夜開催?

 

submission statistics

採択率はこんな感じ。

発表方法は、zoomを使って、事前に録画したプレゼンテーションビデオをチェア(司会の人)に流してもらい、質疑応答にはリアルタイムで答えるスタイルでした。しかし、自分の送ったビデオの音声が本番で流れない(!)というアクシデントが発生し、急遽リアルタイムで発表をすることになりました *3。とはいえ、ビデオを撮影するときに発表原稿付きのスライドを使って一般的な発表と同様の準備をしており、また、ビデオを取り直すために何度も発表練習していたので、本番も割とスムーズに発表を終えることができました。その後の質疑応答では想定していた質問が来たので用意していたスライドを読むだけだったのですが、上記のアクシデントで色々テンパってしまい(画面共有解除後、zoomの画面がバグったりした)、あまり上手く答えられませんでした。これには悔いが残っています😭 英語の勉強は1年以上真面目にやっておらず、質疑応答に自信が無かったので、初回の無料期間を利用して1日だけ英会話をやりましたが、そんな付け焼き刃的な学習はたぶん意味無い。

 

学会は全体的に聴講者は少なく、1セッションあたり、チェアや発表者を含め5,6人しか居ないことが多い感じでした(悲しい)。また、今年のWIは新型コロナウイルスの影響によるオンライン化の対応のせいか、論文の投稿期限が1ヶ月伸びたり、camera readyの期限が急に伸びたりと、論文投稿の時から運営からてんやわんや感が伝わってきていました。学会当日も、事前に知らされたzoomの部屋番号が違っていたり(これのせいで後輩は危うく本人の発表に気付かずに終わるところだった)、そのせいか発表者が質疑応答に現れなかったり(これは私が見た中でも4,5件はあった笑)、また私に関してはビデオの音声が流れないことが本番で発覚するなど、アクシデントが色々ありました。コロナの学会運営は大変そうです。

私の発表は2日目で、1日目は発表練習&緊張であまり他の発表を聞けなかったのですが、発表後は他の参加者の発表もいくつか聴講しました。WIは様々な分野の研究があるため、自分の研究と似ているものや、興味のあるものを見つけるのが難しく、なかなか理解するのが難しかったです。個人的に印象に残っているのは日本人参加者の発表で、Twitterにおけるスポーツのシチュエーション推定とニコニコ動画のタグ推定(間違って理解していたら申し訳ない)です。

聴衆が少ないこともあり、質疑応答はほとんどチェアが行なっていたのですが、私は合計で4回も(!)質問しました。Best questioner awardください。

 

学会も無事終わり、ほっとしていたのもつかの間、共著者の二人に「Closing呼ばれるかもだから、Zoom入っといて」と言われ、この時初めて「ああ、そういえばBest paperとかあったなぁ」と思い出しました*4。共著者の二人のテンション的には、なんとなく受賞する可能性結構高いのかな?という感覚がありました。今回の学会では、いくつか賞があり、「Best reseach paper award」「Best in theoretical paper award」「Best in practice paper award」「Online presentation award」「Best student award」がありました。

 

、、、

なんと、そのうちの「Best in practice paper award」に選ばれました!!!しかし、オンラインだから?か全く実感が無い!選ばれたのはびっくりしましたが、論文を英文校正に3回も出したし(当たり前か?)、論文の主張もシンプル(一方で、定性的な実験から導くには主張が強い感じはある)だし、結構読みやすく書けているのでは?とは思います。それでも選ばれるとは思っていなかったのでビックリです。一般的な学会のBest paperとは違い、色々な種類のBestがありますが、Bestってついてるから実質優勝!!!!国際会議なので実質世界チャンピオン!!!

 

世界チャンピオン

俺が世界チャンピオンじゃあああああああああああ

 実は受賞直後はめっちゃ喜び爆発!という感じではなくて、、、もちろん、WIはそこそこ権威がある学会とは思っていますが、今回の運営の杜撰な感じと、また発表者が本番に現れない(笑)など、また、他のプレゼンテーションでもスライドを埋め尽くす文字をひたすら読むスタイルの方がいたりと、若干レベル落ちているのかな・・・という感覚はありました。 とはいえ、自分が受賞したことを周りの人に報告したときに、むしろ自分よりもとても喜んでくれて、その時に自分も本当に嬉しい気持ちになりました(嘘臭いがこれはガチの話)。

 

ところで論文の内容はどんな感じかというと、タイトルを直訳すると、「ニュースアプリケーションにおける短い滞在時間とユーザ興味との関係の分析」となり、主な貢献は「短い滞在時間が必ずしも低いユーザエンゲージメントを示すわけでは無いことを示した」ことです。

主に推薦システムの分野で、滞在時間が長ければユーザも満足してるやろとみなし、その逆もまた然りでユーザ-アイテム間のスコア付けがされていたのですが、一方で「その逆もまた然り」は正しいのか?つまり、滞在時間が短いときにユーザ満足度が本当に低いのか?ということに疑問を呈し、それを分析を通して定性的に否定したのが主な貢献です。詳しくは論文を読んで欲しい。もうすぐarXivに上がるはずです(はず)*5

 

WIに論文を通せたのも、さらにBest paperの1つまで受賞できたのは、本当に色々な人に助けてもらったためです。共著者の方々は勿論、論文や発表スライドに指摘をくれた先輩や、研究の相談や愚痴を聞いてくれた友人、家族、みなさんありがとうございました。

そして、特に今年の春からメンターとして協力してくださった共著者の関さんには本当に感謝しています。今回の論文の内容は実質M2の春から始めたようなもので、それまでは別の企業のデータ分析をしていました。しかし、いまいち研究が奮わず、別のデータを用いた研究、その候補にあったGunosyさんのデータ分析をしたいと私の希望でお願いしました。そのときに初めて関さんとお話しし、毎週1回ミーティングをしながら一緒に研究を進めることになりました。関さんは当時既に他の共著の方や、某著名なインターン生などと研究をされていたり、KDDやRecSysといったトップカンファレンスにも論文を通されていたので、私なんかと研究をして下さるのは本当に恐縮でした。かく言う私は、M1ではほとんど研究に対する情熱は無く、研究室を頻繁に抜け出しては大学の景色が微妙に良いスポット(友人K曰く)でただボ〜っとしたり、M1の夏には大学院を中退してインターン先に就職することすら考えていました*6。特にこの時期に友人に愚痴を溢しまくっていました。愚痴を聞いてくれてありがとう、友人N 。こんなどうしようもない修士学生でしたが、M2からは心機一転して研究に対して出来る限りの努力はしようと思い、また実際に今日まで走り続けることが出来ました。

関さんは常に私が能動的に研究ができるようにレールを敷いてくれていたように思います。私には受動的な思考が染み付いていたもので何度も受動的な意見を言ってしまいましたし、M1でそんな状態ですからまともに研究を進める方法も分かっていませんでしたが、その度に関さんは何度も私が進むべき道を修正してくれました。また、M1でやる気消失状態の学生が研究の基礎教養を持っているはずもなく、これから研究する研究分野に関しても基礎的な知識すらありませんでしたが、関さんには躊躇わずに基本的なことから質問できました。いわゆる心理的安全性が担保されていたと思います。関さんは未踏ジュニアのメンターなどもされていらっしゃるためか、学生のメンタリングがとても上手なのだと感じました。特に、研究室という閉じた環境で研究している身としては、外部から見た自分のレベル感、立ち位置を知れたのは大きいと思います。他のインターン生の方などと比べた私に対する評価を、非常に正確かつ率直に言っていただき、自分のレベル感を知れたとともに、研究で勝負するポイントを絞ることが出来たと思います。関さんが未熟な私と率直に向き合ってくれたからこそ、私も分からないことは分からないと素直に言えたし、分からない部分は学び、質問しようと自然に思うことが出来ました。

関さんとのミーティングでの会話を通して、頭の中の研究内容がクリアになる感覚を毎週感じていました。当たり前ですが、関さんはやはり自分よりも理解度のレベルが高く、それに付いていくのは最初は中々大変で、ミーティング終了直後は毎回頭の熱が冷めず、熱が冷めるまで部屋の中を歩き回っていました(笑)。毎週定期的に研究の議論が出来るのは本当に大事で、研究の進捗が大きく変わると思います。実は研究の進捗が一番出るのはミーティング直前で、ミーティングのための議事録を書こうとするときに、「あれ、ここ本当に正しいかな」「これやっていないな」と気付くことが出来ていました。思考を文章にまとめるのは本当に大事ですね。

そして何より、M2での研究はやっていて楽しかったです。周りの大学院生の話を聞いていても、研究を楽しんでいる人は少ない気がします。そんな中で、楽しんで研究が出来たのは確実に関さんのおかげだと思います。本当に感謝しています。ありがとうございました。

 

 

とここまでで、なんだか研究生活が全て終わったかのような文章を書きましたが、まだ修論が残っているので、気を抜かないようこれから努めます笑

 

明日はAzusa Kageさんが「技科大を去った私が、豊橋できつかったことと良かったことの話をしたい」について書くそうです。私もそろそろ大学を卒業する(はず)時期で、ちょうど技科大の思い出を思い返しているので、面白そうです。

*1: http://wi2020.vcrab.com.au/

*2: 今年は研究室に3回ぐらいしか行っていない

*3: ちなみにこれはビデオを.m4v形式で送ったせいで、自分の責任も大いにある

*4: 言われるまでネット麻雀をしていたことをここでお詫び致します。

*5: arXivに公開されました 

arxiv.org

*6: インターン先は非常に魅力的な企業ですよ!